2014年1月12日 八ヶ岳 石尊稜 冬合宿


2014年1月 冬合宿 八ヶ岳 西面 横岳石尊稜
【 目 的 】 冬合宿を通じて冬季3000m級バリエーションスキルを習得する
【グレード】 ルートグレード 1級上 ピッチグレード Ⅳ-
岩場と雪稜を楽しむ初級ルート
【所要時間】 通常 2時間半~4時間(経験者)
【 ルート 】 概念図参照
【 日 程 】 2014年1月12日
行者小屋 6:30 出発
石尊稜取付き 7:15
稜線終了点 15:45 地蔵尾根より下山
行者小屋 16:30 到着
【メンバー】 ぐっさんCL、かずやんSL indy(記録)、たいちゃん、ふくちゃん

阿弥陀岳・赤岳・横岳、八ヶ岳の中心的なこれらの山の西面は、特に天候の荒れやすい
冬季においても太平洋側の天候の影響を受けることで天候が安定することが多く、また
ルートの難易度も初級から中級レベルで、冬季アルパインクライミングの入門道場と
言われる山域である。
1月の冬合宿は、行者小屋をベースに「阿弥陀北陵(入門)」「横岳石尊稜(初級)」
「「赤岳主稜(初中級)」がそれぞれ計画されたが、今回は「横岳石尊稜」登攀について
概要を報告する。

硫黄岳~横岳~赤岳と続く稜線を歩かれた方でも、特に横岳付近は多くの岩峰が南北に
連なり、一番スリルを感じる場所ではなかったかと思う。この付近の岩峰には名前がつい
ており、杣添尾根への分岐のある三叉峰(さんさほう)、そこから赤岳方面へ100mほど
向ったあたりが石尊峰(せきそんほう)、さらには鉾岳・日ノ岳・二十三夜峰と続き、
地蔵尾根分岐となる。目指す石尊陵は、横岳西面の根本から急峻な尾根を岩壁と雪稜を使い
石尊峰までダイレクトに登ることができる初級の人気ルートだ。私も過去に2回ほど登って
いる。冬季アルパインを始めたばかりの2003年頃にガイド山行で登った時は、下部岩壁
が怖くてビビッていた印象しか残っていないが、2008年頃にプライベートで登ったころ
は多少度胸とスキルがついたのか、岩壁のクライミングより青空に吸い込まれるように登っ
ていく中間部の美しい雪稜のイメージの方が強く残っている。今回も好天に恵まれることを
期待しつつ、行者小屋のテン場で早めに就寝についた。

翌日、天候は快晴!我々は6時半に行者小屋を出発し、中山乗越を越えてそのまま赤岳
鉱泉方面へ積雪の夏道を一気に下っていった。樹林帯から傾斜が緩くなる頃、赤い橋が見え
てくる。この沢が石尊稜へ続く入口だ。先行者のトレースがあり助かる。
途中に出てくる分岐は2カ所、最初の分岐は左が小同心ルンゼ、次の分岐は左が三叉峰
ルンゼ、我々は右の日ノ岳ルンゼ・鉾岳ルンゼ方面へと入っていく。
間もなく目の前に大きな岩壁が見えてくる。7時半頃に取付きに到着、左が目指す石尊稜
の下部岩壁、正面は日ノ岳稜の下部岩壁になる。すでに先行パーティが取付いており、
順番待ちの状況がここからも見て取れた。我々もここで装備の再点検を行い、左の雪壁から
100mほどリッジを這いあがり、目指す下部岩壁の手前で待機するとなった。振り返ると
結構な高度感がすでに味わえる高さだ。”まあ一時間はかかるかな?”と思って快晴の阿弥
陀岳など、のんびりカメラに収めていたが、なんとここで3時間の待機となった。
後続パーティも数パーティは諦めて下山していった。
さて、もう既に10時半、やっと我々の登攀の順番になった。

下部岩壁のピッチグレードはⅣ級-、このルートの核心になる。
1ピッチ目はリード:indy・たいちゃんで、時間の問題もあるので、ルートを微妙に変えて、
ほとんど同時に2ラインで登った。アイゼンに慣れていればそれほど困難ではないが、
スラブ状の岩壁は足で立たないとしっかりしたホールドがないため初心者には厳しい。
支点は以前に比べればはるかに多く、リードでも安心して登れたが、終了点の立木手前の
乗越部がちょっと難しかった。

2ピッチ目、3ピッチ目は樹林の中のきれいに伸びる雪稜の登攀だ。
リードはぐっさん・indyとかずやん・たいちゃんが交互に登っていく。傾斜は急だがアイゼンがしっかり
効くので怖さはない。みんなこの雪稜でなんとか遅い先行パーティを抜きたいと考えている
ようで、先行パーティも入乱れ始めており、お構いなしでどんどんザイルを伸ばしている。
我々も狭いスペースを見つけて強引にどんどん登っていく。

4ピッチ目は樹林帯も抜けて完全にスノーリッジとなる。
普通ならここはザイルを畳むが、何より我々もこの先で
先行パーティを強引に抜き去りたいと考え、一気に上部
岩壁の取付きまで進んだ。狙い通り10人ほどのパーティ
を抜くことができた。この時点で13時半。
上部岩壁1ピッチと稜線へのルンゼの登攀1ピッチと
いったところを残すのみだが、ここでも先行数パーティが
渋滞を引き起こしており、またもや上部岩壁手前で1時間
の順番待ちとなった。

待機中も天候が良ければ眺めを楽しむこともできる。
隣の中山尾根やその先の赤岳主稜の登山者の様子を
見るのも楽しいものだが、14時を過ぎると急激に
天候が悪化し始め、それどころではなくなった。
強烈な西風が雪を巻き上げ、氷の粒が顔面を叩き、
周囲もみるみるガスって、そろそろ動かないと
身の危険を感じ始めた14時半頃、やっと最後の上部岩壁
の登攀となった。

上部岩壁のピッチグレードはⅢ級、リードはぐっさん・かずやん。10mほど登った先のピナクルに
スリングで支点を取る。このあたりは多少高感度もあるが、ボールド・スタンスとも豊富で
、我々パーティは何の問題もなく通過する。

最終ピッチは氷化した雪のガリーを100mほど登るだけ。
途中にピッチを切る場合もあるが、とにかく天候の悪化が激しく、風雪とガスで視界も声も
まったく届かないため、リード:indy・たいちゃんで、ザイルがいっぱいになったらどんどん後続
も登るというスタイルで一気に稜線まで逃げた。

稜線到着は15時45分頃。ザイルを畳んで、稜線のトレースも吹き消される中、なんとか
全員無事に地蔵尾根から下山することができた。

石尊稜の美しい雪稜 今回の石尊稜は初級コースで”初心者でも楽しめる”と説明されることがあるが、やはり
「しっかりしたリーダーのもと」ということが重要だと思った。
我々パーティは年末から何度も前尾根・後尾根など、本チャンさながらのアイゼントレーニ
ングを積み、互いのスキルも確認し、この合宿に臨んだわけだが、他のパーティは残念なが
ら明らかにスキル不足・練習不足と言わざるを得ない状況だった。

まだ、本栺的なアルパインクライミングには興味がない方も、多少興味があるけど躊躇され
ている方も、機会があれば、一般的なクライミング講習やアイゼントレーニングに是非参加
されることをお勧めします。

すべてはあなたの安心・安全のために、そしていつかは一緒に一般道からでは見られない
絶景を楽しみましょう!(Indy)

 

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